「とりあえず抜いてから映画観に行こう」で終わってしまった関係

男はセックス（またはオナニー）して精液を放出してスッキリすることを「抜く」という。「一発抜いてから勉強しよう」とか「ピンサロで抜いてきた」という使い方をする。男の性処理の本質を言い表す言葉としてこれ以上の名句はないだろう。

だが使いかたを誤るとひどい目に遭う。

俺の出会い系失敗談を書いてみたい。

彼女が欲しくて出会い系サイトに登録したのは約一ヶ月前のことだ。サイト名はワクワクメール。三週間かけてサイトを巡礼し、やっと20代後半のOLをゲットした。映画が好きという共通の趣味から入り、デートに持ち込んだ。

そのときは彼女を体目的のセフレにするか、本命恋人にするか決めておらず、曖昧だった、彼女も同じ。暇なスケベ女の軽さと、OLのプライドが半々だった。

だからまじめに映画も観に行ったし、ホテルでエッチなこともした。彼女も両方楽しいようで、何回か逢瀬を重ねても、彼女が俺にとってセフレ向きなのか恋人向きなのかわからなかった。出会い系の女と知り合った当初は、みんなこんな風に混乱するものなのだろうか。

だがそれから数日後（昨日の話だが）、彼女の本質がようやく見えた。だが、それが見えたときはもう遅く、二人の関係はほぼ破局に近いものになっていた。

俺は彼女にこんなことを言った。それはいかにも、彼女への向き合い方が完全に定まっていない男の言いぐさだった。

「とりあえず抜いてから映画観に行こう」

「抜いてから？」

眉をしかめる彼女。

「抜くって何よ」

「抜くは『抜く』だよ……言いにくいけど、精子出すこと」

「そんなこと言う人嫌い」

そっぽを向く。

俺はあわてて「言い方が悪かった……ホテルでセックスして愛し合ってから映画観に行こう」

「もう遅い」

彼女は自分が体目的の女に思われていると察したのだろう。彼女はそのときプライド高いOLに戻っていた。

「とりあえず抜いてから映画観に行こう」

抜くなんて言葉は、女性の前で軽々しく使うものではない。